アダルト・ユニバース
 
                            「娼夢 絡む」
 
                              作:悪平 修
 
 
かちり。
「おおっと動くなよ、おねぇちゃん。」
「………!」
 銃口を突きつけられ、キャナルの動きが止まる。
「おねぇちゃんの瞬発力と、俺の指の動き、どっちがはえーかなぁ?」
「っ……」
「くっくっくっ、そうそう、大人しくしてりゃぁ殺しはしないさ。さぁて、じゃ、こっちに来てもらおうか。」
 男は憎たらしい笑顔を口元に浮かべながら、銃口を使ってキャナルを誘導する。
「……一体どこにつれて行くつもり?」
「天国さ。」
 男の言葉に、かすかに眉をゆがめるキャナル。
「殺すなら今すぐやったら?」
「殺す?
 おいおいねーちゃん、耳わりーなぁ。俺は天国に連れていくっていってんだぜ。地獄じゃねー。」
「……?」
「へへっ、まさに天国だよ。ねーちゃんにとっても……」
 男は話しながら、ある部屋の戸を開けた。
「俺達にとってもな。」
 おそらく尋問するための部屋なのだろう、様々な計測機械とコンピュータ、そして後ろの男と同じようなむさい男どもが列挙していた。
「ここが天国かしら?」
「いいや、天国の前にちょこっとお話ししようぜ、ねーちゃん。」
「おぅ、その女か?」
「ああ、上の第2算術室の側でナンパしてきたんだ。」
「なかなかキュートな格好だねぇ。」
「だろ?」
「おいおい、募る話はお姫様をベッドにご案内してから、だろ?」
「おおっとそうだった、ついついマナーを忘れてたよ。」
 どっ、と笑う一同。キャナルの怪訝な表情を見て楽しんでいるようだ。
「じゃ、その前に乾杯と行こうか。
 ……ほれ。」
「あら、私にもワインをくれるの?」
「ああ、とっておきのワインさ。しっかりと味わってくれよ。」
 このワインの"意味"を把握しつつも、キャナルはぐいっとそれを飲み干す。
「良い飲みっぷりだ。今度ふたりっきりで飲みに行こうぜ。」
「おいおい、俺達は邪魔者かよ。」
「へへっ……それではお嬢様、こちらへ。」
 怪しさ120%の拘束具付きベッドを前に、男はぺこりとお辞儀をする。
「あら、お姫様のベッドにしては役不足ね。」
「それはどうかな……」
がしゃっ。がしゃっ。
 ベッドに寝かされ、両の腕と足を固定されるキャナル。むさ苦しい男どもに見下ろされる気分は、決して良い物ではない。
「さぁて、じゃ、ねーちゃんにここへの招待状をくれたのは、誰なのかな?」
「足長おじさんよ。」
 不適な笑みを浮かべて問う男に、キャナルは同じような笑みを浮かべて答える。
「ところで、どうやってここまで来た?あそこはかなりのセキュリティがあるはずだが……」
「決まってるじゃない、魔法を使ったのよ、魔法。」
「おい、そろそろ良いんじゃねーか?どーせこのまま続けたって一緒だって。」
「そうだな……じゃぁ、天国へご招待と行くか。」
「……え?」
かちっ。
う゛い゛い゛ぃぃん。
 キャナルを固定しているベッドが徐々に動き出し、壁のように垂直になりながら移動する。
 しばらくすると、部屋のある一角の壁の前で動きが止まった。
「ここが天国?」
「じゃぁ、天使様をお呼びするとしようかねぇ。」
ぷしゅーっ。
 目の前の壁が上に上がり、目の前に少し広い部屋が現れる。その殺風景な部屋の床に、彼女は座り込んでいた。
「ミ、ミリィ!?」
「……ぁぁ……キャ…ナルぅ……」
 レオタードのような服を身にまとったミリィの表情は苦悶として、目が潤みきっていた。
「さぁ、そのねーちゃんとゆっくり天国を楽しみな。」
「俺達は別室で鑑賞させてもらうわぁ。」
ぷしゅーっ。
 男達が部屋から出ていくと、それを見計らっていたかのようにミリィが近づいてくる。
「キャナル……かわいい……」
 愛しい恋人を前にしたかのような喜びを浮かべながら、キャナルの体をはい上がるようにするミリィ。
「ちょ、ちょっとミリィ、落ち着いむぐぐっ!!!」
 いきなり口を塞がれるキャナル。さらに、わずかに空いていた透き間からミリィの舌が進入してくる。
「ん……」
「んんーっ!むぅ!んっ、むぐぅ、む……」
「んふぅ……ふぅ……んん……」
「むふっ……ふぅ……ん……んふ……」
 キャナルの抵抗が収まってきたのを確認すると、ミリィはキャナルの胸元に手を添え、そっとさする。
「ん……」
「ふぅ……」
 甘い刺激がキャナルを襲う。その耳の赤さが、彼女の興奮を物語っていた。
 徐々に手の動きをみだらにしながら、そっと唇を離すミリィ。
「キャナル……」
「あ……ミ、ミリィ……ン……そんな……あん……ここまで……」
「……だめよ、お仕事でしょ……」
「あんっ!」
 そっと耳元をキスしながら、ミリィは小声でキャナルに言い聞かせた。
 
 
 
「……と言うわけだ。やってくれるな、ケイン?」
「あのなぁレイル、そういうことは星間警察の仕事だろう?何で俺らが動かなきゃいけないんだ?」
「動きたくても証拠がないんだよ。」
 数時間前。ソードブレイカーの中で、ケインはレイルと話をしていた。
「せめて証拠をつかむだけでもいい。
 トンバの奴らが、人身売買をやってると言う証拠。それをつかんでくれさえば良いんだ。」
「やだね。」
「……おまえ……この前の酒場での事件、どう処理しても良いっていうんだな?」
「ケイン!貴方、また何かやったの?」
「信じられない!だからこうしてうまいように使われるのよ!!」
「うるせー!俺のセンスにけちつけるからだ!」
「……じゃ、じゃぁ、そういうことで、よろしくな。」
「あっ、こらまて、まだ話は……」
「もう通信切れてますよ。」
「くそっ!」
「……で、どうするの、ケイン?」
「断るわけにもいかないんだが……………………………。」
「……わかったわ。」
「ミリィ?」
「私とキャナルが囮になる。その間に、ケインが証拠をつかむの。」
『ええっ!?』
「キャナル、やりましょ。女の力を見せつけるのよ!」
「ちょ、ちょっと待てミリィ!」
「ミリィ!?一体どうやって?」
「貴方がこの前の仕事で使った手よ。」
「えっ?」
「じゃ、ケイン、あっちいっててね。」
「おいおい、何で俺が席を立たなきゃいけないんだよ。」
「いーからいーから。」
「お、おいこらミリィ……」
ぷしゅーっ。
 強引にケインを部屋の外に出したミリィは、キャナルの前に座る。
「ほら、この前ギルガさんの依頼の時に使った手。」
「……え?えええええっ!?」
「何恥ずかしがってるのよ。」
「ま、まさか、ミリィ……」
「そ。
 私たちがわざと捕まるの。たぶん馬鹿な男どもは、私たちを辱めようとするでしょ。
 そこで私たちが注意を引きつけておけば、ケインも楽に仕事が出来るって訳。」
「で、でも……」
「だぁいじょぉぶ、私がリードしてあげるから☆」
「いや、そうじゃなくって……」
 顔を赤らめて否定するキャナルに、ミリィは真剣な表情で言い聞かせた。
「いいキャナル、マスターのためなのよ。」
「う゛っ……」
「だいじょぶだって☆」
 ミリィの明るい笑顔を見て、一体その自信はどこから出てくるのか理解できないキャナルであった。
 
 



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